認知症で車椅子でも旅行に行けた ~前編~
遡ること5年前。
加齢による物忘れとは少し違う感じ・・・。から始まった実家の母の認知症。
母と父との二人暮らしな老老介護も、
母が深夜に出歩くようになったことから、いよいよ限界に。
母は、今年の6月から介護施設(老健)に入所していました。
ひと月ほど前のこと。父が私に頼み事があると。
老健から団体旅行に行くのだけれど、それに同行してほしい。
3人での旅行は最後になるかもしれない。なんとしてでも実現させたい。と。
最後だなんて、そんな寂しいこと言わないでよ。と思いつつ、
来年には80歳になる両親。
本当に最後になるかもしれないなぁ・・・。
そんなわけで、月曜日から1泊2日で父と母と私は、
信州へ旅行に行ってきました♪
今日はその記録。
◆プロローグ
旅行の日程は、平日でした。
認知症で意思疎通が図りにくく、車椅子の母とバス旅行。
腰の痛い父も一緒で、私は2人をサポートしきれるのかしら。
それに、平日に家を3日も空けるなんて、初めてのこと。
ペコの散歩や食事、持病の投薬のことも心配。
色んな心配を抱えながらも、
それでも、きっとなんとかなるよね!
なるなる!
家族には、それぞれ役割分担をお願いし、
旅行の前日に、私は実家へと向かったのでありました。
ちなみに、家族の役割分担は・・・
ペコ父=仕事が忙しく帰りが遅いので、朝の色々。
長男=仕事帰りに家族の夕飯(お弁当)の買い出し。
次男=学校から帰って、犬の散歩と、犬のごはん、投薬。
次男には、必然的に最も大変な役割がいっちゃった^^;
◆リフト付き大型バス
介護施設に入ってからの母は、あまり歩く練習をしたがらず、
4カ月の間に車椅子になっていました。
旅行の10日程前に、自分で車椅子から立ち上がろうとした拍子に転倒し、
おでこを切って目の周りがパンダみたいに黒くなってたのですが、
そのアザも薄くなっていました。
施設から旅行に行く参加者さんは、利用者が6名。
付添の父と私。他の利用者さんは、単独でした。
それから、医師と、介護スタッフさんの8名。
驚いたのは、車椅子ごと乗られる大型バスがあること。
真ん中に大きな扉があり、それを外側に倒すとリフトになって、
そのリフトで車椅子に乗ったまま乗車できるようになってるのね。
車椅子は床に金具で固定し、シートベルトもつけられるようになっていました。
車内では、ほとんど眠っていた母。
花を撮る父
サービスエリアでは、全員がバスから降り、
スタッフさんは、利用者をトイレに連れていってくれました。
乗り降りだけでも時間がかかるのに、上着を着せたり、脱がせたり、
施設とは違うトイレでの介助、エトセトラ、エトセトラ・・・
スタッフさん、ほんとすごい!
介護の仕事って、体力勝負。
そして、技術だねぇ。って感心しきりでした。
◆ロープーウェイ
色々な観光地をまわったのですが、ロープーウェイに乗って、
1600mの山の頂上まで行く。というのがありました。
私は、ここでも感心しきり。
バリアフリーってすごい。
ロープーウェイに車椅子ごと乗れるんだもの。
乗車をサポートする従業員さんも、誘導に慣れていました。
まさか母と父とロープーウェイで山の頂上にいけるなんて!!
◆母が歩いた
頂上で、写真を撮ったり散策していた時。
母が急に車椅子から立ち上がろうとしました。
父は、「危ないよ。歩けないよ。無理無理!」と言っていましたが、
スタッフさんは、母の意欲を感じとってくれ、
母の手をとり、歩かせてくれました。
ほんの30mくらいかな。
それでも、母の足は一歩ずつ、前へ、前へ・・・
確実に自分の意志で歩みを進めているのですよ。
認知症って・・・
何もわからなくなる。
自分のことも、家族のことも。
何を言っても、すぐに忘れてしまう。
何を言っても、伝わらない。
自分ひとりでは何もできない人。
本当にそうなのかな。
もし仮にそうだとしても、
今ここにいて、なんだか立ちたい。ちょっと歩きたい。
母はきっとそういう気分になったんだろうな。
◆いまどきのバリアフリー
旅行のお昼はバイキング、それから夕飯は旅館でのご馳走でした♪
そもそも旅行の企画をする時に、
バリアフリーなところを選んだと思うのですが、
バイキングをしたレストランも、宿泊した旅館も、
バリアフリーが行き届いているなぁ。と感じました。
バリアフリーというのは、その施設の床に段差がない。とか、
通路に手すりがついている。とか、
そういうハード面の事を言うだけじゃなくて、
関係する方々の心。ソフト面がバリアフリーっていうのかしら。
介護を必要とする人と接することに慣れている。
そんな風に感じました。
その反面・・・
慣れていない方々。これは一般の人です。
バスの乗り降りの際、リフトから車椅子ごと降ろされる利用者や私たちを、
好奇な目でジロジロと見ながら通り過ぎる人。
指を差しながらコソコソと耳打ちをする人。
一般の人の中には、きっと私も含まれるんだろうな。
以後、気を付けよう。そんな風に反省もしました。
◆食べる!食べる!
バイキングも旅館での食事も、母は食に関して貪欲でした(笑)
食器を持ちたい。食べ物を口に持っていきたい。
なんなら手づかみでも食べたい(笑)
食事介助は私ではなく、スタッフさんがしてくれました。
何かあるといけないからかな^^;
旅館でのご馳走なので、まったく普通の食事です。
刻まれていないので、スタッフさんはキッチンバサミで小さく切ったり、
そのまま食べられそうなものは、そのままで。
母は、食材によっては、
自分で食器とスプーンを持って、
なんとか口に運ぶこともできていました。
好きなものは、「美味しいよ♪美味しいよ♪」と言いながら、
口触りが悪いものや、ちょっと好きじゃないものは、
口からプイっと出して(笑)
とにかく、食べることに真剣に向き合っていました。
スタッフさん曰く、いつもより沢山食べるし、
いつもより食べさせるのが楽♪と^^;
それって、ただ何かしらを食べる。だけじゃない何か。
旅先とか、旅館とか、人たちの雰囲気、隣にいる私・・・
「食べる」って、ただ「食べる」だけじゃないものが、
やっぱりあると思うんだよねぇ。
◆深夜0時のオムツ交換
そうそう。
夕飯の前には、旅館の貸切風呂でお風呂にも入れてもらいました。
夕飯の後は、歯磨きもしてもらって。
さて、各自部屋に戻って寝る時間。
スタッフさんは、母を車椅子からベッドに移してくれました。
すぐにスヤスヤと眠る母。
「0時にオムツ交換に来ますから、鍵を開けておいてください。」って。
その時のつぶやき。
0時にオムツ交換に来ます♪って言われて、
— ペコ母 (@peko0421) 2016年10月24日
あぁ、夜中にオムツ替えるのって睡眠を妨げて良くないって本に書いてあったよねぇ…って内心思ってたのだけど。
0時に来たスタッフさん、凄い手際よさで、あっという間に交換し終えて、婆は睡眠妨げらるどころか、グーグー寝てる(笑) pic.twitter.com/eKZxBdWqbp
このつぶやきの通りで。
スタッフさんの手際の良さに驚いた深夜。
これをつぶやいてるのが、0時8分だから、
いかに早いかってのが、わかるよね。
その後、朝までグッスリ眠り続けた母。
こうして、あっという間に一日目が終わったのでした。
ー後編へ続くー